前回のJournalでお伝えした通り、epe | nylonは、本革のepeで大切にしてきた価値観を、本革という選択肢を持たない方にも届けるために生まれたラインです。その中心となるテーマが「ハイスペックを、再定義する。」という言葉に集約されています。今回は、この考え方について、もう少し具体的にお話しします。
「ハイスペック」と聞くと、多くの人はポケットの数が多いこと、素材が分厚く頑丈そうに見えること、金具や装飾的なディテールが豊富なことを思い浮かべるかもしれません。しかし私たちは、その多くが実際の使用シーンでは「過剰」であると考えています。使わないポケット、持ち歩くだけで肩に負担をかける重さ、意味のない金具の数々。それらは本当に「高機能」と呼べるのでしょうか。都市で働く私たちの一日に、本当に必要なものは、実はもっとシンプルなはずです。

epeは、この問いに対する一つの答えとして、3つの軸で製品づくりを行っています。
一つ目は「Well-Designed(デザイン性)」。「飾らないことが、最大の知性になる。」という考え方をもとに、装飾のための装飾をそぎ落とし、機能から逆算したシルエットだけを残すという考え方です。外装のポケットを必要最低限に設計し、見た目の美しさを追求しています。バッグをブラック一色で仕上げているのもそのためです。どんな服装にも、どんな街の風景にも、静かに、けれど確かな存在感を持って溶け込むデザインを目指しています。
二つ目は「Full of Functionality(機能性)」。「真の必然性が、そこにある。」というメッセージをもとに、本当に必要な機能を集約しています。たとえばDAY PACKの背面PCルームは、クッション性のある生地で16インチ程度のPCまでしっかり保護しつつ、側面ポケットはマグネット式とファスナー式の2種類を使い分け、500mlペットボトルからスマートフォンまで、考えることなく取り出せる設計にしています。複雑なギミックではなく、直感的な使いやすさこそが、私たちの定義する機能性です。
三つ目は「Durable(耐久性)」。本体生地のCORDURA® RE/COR™は、通常のナイロンの約7倍ともいわれる強度を持つ素材をベースにしながら、DAY PACKで約920g、TOTE BAGで約710gという軽さを両立させています。タフでありながら軽い。それが、日常で長く使い込んでいただくための最低条件だと考えています。使い捨てるのではなく、深く長く使い込んでいただくこと自体が、私たちにとっての「スペックの証明」です。
この3つの軸は、それぞれ独立したものではなく、互いに補い合う関係にあります。デザイン性を突き詰めれば無駄な装飾が減り、その分だけ軽さという耐久性の一部が生まれる。機能性を突き詰めれば、ポケットの数ではなく配置が重視され、結果としてシルエットは自然とシンプルになる。私たちが「機能美」という言葉を使うのは、この3つが分かちがたく結びついているからです。
「飾らないことが、最大の知性になる。」「真の必然性が、そこにある。」とお伝えしている通り、私たちが向き合っているのは、ポケットの数を競うことではなく、本当に使われる機能だけを見極めて残すことです。新しい機能やポケットを増やすことは簡単ですが、増やした分だけ重さや価格として使い手の負担になります。だからこそepeは、足し算ではなく引き算から製品づくりを始めています。
「オーバースペック」ではなく「リアルスペック」。epeにとってのハイスペックとは、スペック表に並ぶ数字の多さではなく、実際の一日をどれだけ機動的に過ごせるかという一点に尽きます。これは、オーバースペックになりすぎた現代のバッグに対する一種のアンチテーゼであり、1つの挑戦とも言えます。
次回のJournalでは、これらすべての製品の土台となっているメイン素材、「CORDURA® RE/COR™」について、さらに詳しくご紹介します。